浸水

氾濫した河の水の引いたあとの 土手のコンクリート敷で
いくつかの記号たちがわらわらと 新聞の切り抜きの
「正義」と「未来」と「怒り」という脅迫状じみた文字列を
退屈のプラカードに貼付けて友達になりましょうって手を振っていた


鉛色の商店街のお肉屋さんがコロッケをおまけしてくれた
たいそうまずいコロッケで僕は一口でイヤになったけど
ありがとうごちそうさまって言ったんだ ありがとうごちそうさまって

言ったあとでなんか悲しくなったので
「あんまうまくないっすね」 って言ってしまった

つばが口の中にあるときはいいけれど
一度吐いたつばを舐めるのはイヤだなぁ
君の体のなかも僕の体の中もいろんな死体で満たされてる

口づけをしましょう 二人だけの秘密をここでつくりましょう
真っ黒い腹の中を行き来する 透明が見えるまで

いつか君も僕も死んじまって変な臭いの 灰になって 感傷の種になる
かわいい君の死体もきっと変な臭いだね 泣きたくもなるよね

だけどそんな君が好きさ いつか腐りゆく君よ もっと悪態をついてみろ
年をとって愚痴を吐いてしわくちゃで笑え 生きてるうちに軽くなれ

君が君のままでいようとすることが僕を どうも妙な気分にさせるよ
誰かのイメージの雑居房の中にいるために 今日も反省をするのかい?

恋はいつか終わる 誰もが歳をとる 水かさは増してくる
だからなるだけ軽くなれ 生きてるうちに軽くなれ
だからなるだけ軽くなれ 生きてるうちに軽くなれ

歌詞『浸水』のこと

氾濫した川の水が引いた後の土手のコンクリート敷きで、こういうやつ♂やこういうやつ♀がいっぱい集まって鉄パイプ等をふりまわしながらゲラゲラ笑っているという夢をみたのです。 集団や空気というものを疑え。イヤでも少しは侵食される。どうか空気という実体のない化け物にとりこまれませんように、芯をしっかりと。